B型事業所を辞めたい理由と原因、そして対処法Company Information
B型事業所(就労継続支援B型の事業所)を利用している方が「辞めたい」と考える理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
現在すでにB型事業所を利用していて今後のことを不安に感じ始めている方や、仕事や人と関わったり生きがいを見つけたいなどの理由でB型事業所を利用したいが続けられるだろうか、と考えている方に向けて、本記事では「辞めたい」と感じるケースにはどのようなパターンがあるのか、またその対処法などについても解説しています。
利用当事者の方も、ご家族の方や友人の方もぜひ、悩みを解決したり、理解を深めたりするためのご参考になさってください。
B型事業所を辞めたいと思うみんなの理由
「B型事業所」とは障がい者就労継続支援事業の一種である「就労継続支援B型」を利用できる施設・事業所です。
障がいによって一般企業に勤めることは困難だが社会と関わりたい、就労の機会を得たい、能力向上・生活向上を目指したい、といった方が利用できる事業所であり、通所して授産的な活動(ものづくりや作業など)をおこないながらも、就労移行支援などとは異なり工賃として報酬も得られることが特徴です。
こういった、本来働きがいや生きがい、将来に備えた成長機会などを得られる場所であるはずのB型事業所を「辞めたい」と感じてしまうケースにはどのような例があるでしょうか。
一般的に見られるいくつかの例を具体的に解説します。
症状が出てつらく感じる
障がいがある方は、障がいや疾患の種類、そもそものその日の体調の変化などによって症状の現れ方の波が比較的大きくなってしまう場合も多く、せっかく頑張ろうという思いで通所しても、どうしても現場に着いてからつらく感じてしまうことがありえます。
また、そういった自分の身体ならでは、疾患ならではのつらさは周囲の理解をすんなりとは得にくいということから、対人関係のつまづきなどを感じて「このまま続けられるだろうか」「休みたい」「辞めたい」という悩みにつながってしまうこともあるでしょう。
すぐに疲れてしまう
障がいによってもともと疲れがたまってしまいやすい方や、症状の現れ方の波が大きい方は、本人の意思とは裏腹に、身体や気持ちがすぐに疲れてしまうことも多くあります。
身体や気持ちに疲れを感じると持続力の低下、集中力の低下につながってしまうためやるべき作業もうまくいかないことが多く、職員から作業についての注意を受けてしまう、あるいは本人が責任を感じてしまうといったことにつながります。
なぜ行くのか理由が見つからない
B型事業所へ通うことを、例えば家族や知人から勧められた、あるいはなんとなく社会的な通例として知ったから、などの理由で決めた場合には、いざ通い始めたものの、通い続ける理由が見つからないという場合もあるでしょう。
また、本人の意思で通っている場合でも、例えば「行かないと生活費が払えないから」「行かないと障害年金がもらえなくなるのでは」といった差し迫った不安による動機が主だった場合や、「本当は一般就労したいのに雇用してもらえない」「病気(障がい)があることを認めたくない」といったやり場のない気持ちに起因している場合には、事業所そのものに通いがいや価値を見いだすことができない可能性があります。
利用者同士の人間関係がつらい
B型事業所であっても、一般就労の職場であっても、さまざまな考え・性格の人が集まります。B型事業所は、自分と同じくなんらかの障がいがある人々が多く集まっているという面では安心感を得られる可能性があるものの、障がいや疾患の種類の違い、症状の大きさの違い、そのほか性格の違いなどによって、やはり人間関係がうまくいかないことがありえます。
また事業所によっては、作業内容が過重労働気味になり、気持ちに余裕がないことから利用者同士の関わりがギクシャクとしてしまうことも考えられます。
支援者との人間関係がつらい
利用者のサポートや作業のレクチャーをしてくれる職員、作業場ごとの管理者や事業所の管理者など、B型事業所で接することになる支援者側の人々との人間関係も、場合によっては辞めたいと感じてしまう理由になりえます。
本来、B型事業所は障がい者の能力向上や就労機会増大をサポートするという目的をもった事業所であることから、障がいのある人の気持ちに寄り添ったり、作業についても適切・適度な指導をおこなったりする場合が多いですが、それでも中には障がい者への共感性に欠けていたり、疾患の細かな調子の変化などへの理解が足りていなかったりする場合もあるかもしれません。
そういった場合、せっかく利用者は前向きな気持ちで通所していても、支援者側の人物との関係がつらくなって辞めたくなってしまう可能性があります。
いくまでに時間が掛かる
自宅から事業所までの距離が遠すぎる、いくつもの交通機関を乗り換えなければならないなどの状況により、通所のための時間があまりにもかかってしまうという理由で通うことがつらくなってしまう場合があります。
工賃が安い
B型事業所は、雇用契約を結び正規の給与が発生するA型事業所とは異なり、あくまで授産的な活動に伴う工賃を受け取る仕組みであり、その工賃も低額となりがちです。
社会との関わりや自身の成長を主目的としている場合には収入の大小に関わらずやりがいとなりえますが、単純に作業量や費やした時間の対価だけを求める場合、工賃が安いと感じてしまうこともあるでしょう。
辞めたいのに辞めさせてくれないトラブル
さまざまな理由からB型事業所での授産的な活動を辞めたいと思った場合でも、「すんなり辞めさせてくれない」というケースがあるという話を耳にします。
このようなケースは決して多いというわけではなく、辞意の伝え方に少し齟齬があったり、支援者との気持ちのすれ違いが少しあったりという場合もありますが、具体的にはどういったことが考えられるかをみてみましょう。
辞めさせない理由は?
利用者側に辞意があった場合に、B型事業所側がそれを引き止める理由にはさまざまなものが考えられます。
例えば、利用者の疾患や障がいの様子・程度などを真摯な姿勢で観察しながら、「きっと今のつらさを乗り越えればより良い将来につながる、正規就労の機会につながる」との考えであったり、「つらさを解決できる方法がある」「作業内容が適していなかったのであれば、担当作業の変更などの新たな機会を提供したい」との考えであったりという場合があります。
また、利用者に辞意の理由を聞いた際に、答えが曖昧だったり要領を得なかったりした場合には、「障がいのつらさで自暴自棄になってしまっていないかな?」「辞めたとして、今後はどうするつもりなんだろう」との心配の気持ちから引き止めてしまうこともあるでしょう。
一方で、就労継続支援はあくまで「事業」であるため、事業所側の都合による引き止めもまったく無いとは言いきれません。
就労継続支援をおこなう事業所は、例えば利用者が通所する日数や人数に基づく助成金を国から得られるという側面があり、通所する利用者が減ってしまうということは、すなわち事業所の収入減ということにもなるからです。
むろん、収入のことばかりに重きを持つ事業所が世間に多く存在するというわけではありませんが、事業である以上は、利用者の辞意があってもまずは理由を確認することから始める、理由によっては引き止めを試みる、という場合があるでしょう。
B型事業所を辞めさせてくれないときの解決法
B型事業所側が利用者の辞意を引き止めるのは善意である場合も多くありますが、とはいえ利用者本人がどうしても辞めたいと思っているのに強引に引き止められる、あれこれと理由をつけられていつまでも辞めさせてもらえない、ということであれば、それは本人にとって大きなトラブル・悩みとなってしまいます。
そのような場合には、以下に挙げるような方法をとることをおすすめします。
事業所を運営している本社に相談する
事業所の現場職員や管理者に話をしてもうまくことが進まない、話がこじれてしまった、というような場合や、これまでの関係性から伝え方が難しい、というような場合には、事業所を運営している本社に直接相談することを検討しましょう。
社会福祉協議会など相談先に連絡する
B型事業所が事業運営上の各種申請を通していたり、新規利用者の紹介を受けたりする機関として、各都道府県、地域ごとに社会福祉協議会、福祉局、市役所の障害福祉課といった関連機関が存在します。
事業所側で自分の意思をなかなか汲みとってもらえないような場合には、こういった関連機関に相談することで仲介してもらえたり、事業所へ指導してもらえたりという場合があります。
行かないようにする
こちらはあくまで最終手段とはなりますが、自分に明確な辞意があるにも関わらず各所に相談してもなかなかことが進まない、というような事態がもしあった場合には、「もう辞めることに決めたので行きません」といった旨を事業所側へしっかりと伝えたうえで、単純にもう行かない、という選択肢もあります。
就労継続支援B型においては雇用契約が結ばれるわけではないため、懲戒解雇の事実が残ってしまったり、損害賠償を請求されたりといった不利益の心配はありません。
B型事業所を辞めたいと思ってしまった原因
そもそもB型事業所を利用し始める際の目的として、社会と関わりをもつため、自分の将来のためなどポジティブなものであったはずなのに、最終的に「辞めたい」という気持ちに至ってしまうのはとても残念なことです。
そうなってしまう原因のうちのいくつかを、一番最初の事業所選びの段階から避けておける場合がありますので、その点を以下でご紹介します。これから事業所選びをする方も、ぜひご参考ください。
自分に合わない事業所を選んでしまった
いざB型事業所に通いたいと思い立った際には、役所の障害福祉課、ハローワーク、そのほか就職支援会社などに相談しながら通う事業者を探し、選ぶことになりますが、この際に自分の能力や性格とアンマッチすぎる事業所を選んでしまったケースです。
B型事業所に通っておこなうことができる授産的な活動には、例えばものづくり、農作業
、清掃作業といった身体を動かす作業のほか、データ入力やライティングなどのデスクワーク、衣類のクリーニング補助といったものまでさまざまな種類があり、事業所によって取り扱われる活動内容が異なります。
距離が遠い事業所を選んでしまった
自宅から事業所への距離については、選ぶ際にひと目でわかり判断しやすい部分ではありますが、事業所選びの段階で作業内容の好みや周囲環境の魅力、関連設備の魅力などほかの要素を重視しすぎたことによって、遠すぎる事業所を選んでしまうケースがあります。このような場合、通所先での活動自体に慣れて魅力部分が日常化しはじめた頃に、「日々繰り返すことなのに距離が遠すぎた」と後悔するということもあるかもしれません。
労働条件が合わない事業所を選んでしまった
例え自身の成長のため、社会と関わりをもつため、などの目的があったとしても、作業内容の負担の大きさや活動時間など、労働条件が合っておらず長く続けられなければ意味がありません。
自分の障がいをしっかり理解していなかった
この点は、自身が普段から向き合っている障がいについて、「なにかの活動や作業をしたときにどう影響する可能性があるか」「長時間作業をつづけた際にどのような可能性があるか」といったことを含めた、当該活動に関連しての理解や再確認が足りていなかったというケースです。
次のB型事業所を上手に選定するポイント
前項でご紹介した、辞めたいと思う原因になりえる事柄を踏まえつつ、B型事業所を選ぶ際のポイントを見ていきましょう。
もちろん実際には、以下でご紹介するような点を踏まえつつ、役所の担当者やハローワークの担当者に自分の状況を正しく伝え、事業者選びをサポートしてもらうのが良いでしょう。
自分の障がいについて正しく理解する
例えば身体の一部分の麻痺、統合失調症、高次脳機能障害や記憶障害など、自分の障がいについて種類として認識していたとしても、それに伴って起こる状況や症状、疾患や体調の変化の程度などは人によって細かな違いがあります。
外部に通い、特定の活動をおこなうということと考え合わせて、自身の障がいについてあらためて理解を整理しておくと良いでしょう。
職務能力や適性を理解する
B型事業所で参加できる活動については主に身体を動かす活動、デスクワーク、そのほか諸作業などさまざまな種類があるため、自分にとってどういった活動が適当であるかを事業所ごとの活動内容一覧などを見ながら検討しておきましょう。
作業の種類のみならず、連続的に一定時間繰り返しおこなう作業なのか、断続的な作業となるのか、マイペースでなにかを完成させれば良い作業なのか、といった点も考慮に入れながら適性を検討します。
指導員や事業所の雰囲気を事前に確認する
B型事業所の多くでは、決定前の段階で活動の様子を見学できるような仕組みも用意されているため、積極的に事前見学をおこないましょう。
また見学ができない場合でも、インターネットの口コミや、ハローワークでの評判などで情報収集をおこない、なるべく事業所の雰囲気や事業所内の指導員の雰囲気を伺っておきましょう。
労働条件を事前に確認する
週に何回、何時間ほど活動をすることになるのかといった条件面をしっかり確認しておきましょう。
特に、疾患や障がいの面で長時間連続で活動をすることが難しい場合には、適度な休憩をとれるのかという点も確認しておくことが大切です。
仕事内容を事前に確認する
障がいの状況や自身の適性を踏まえたうえで、活動内容をしっかり確認しておきます。
また、適性面だけでなく、「自分が無理をせずに、心に負担を感じずに通い続けられる内容か」という点も重要です。
B型事業所を辞めてしまう前にできること
いま通っているB型事業所を辞めたいと思った場合に、大きな理由がありすでに心に決めているような場合は別ですが、辞める以外に何か選択肢がないかを自分で探ってみることも重要です。
日数・時間を減らしてみる
通う日数や、作業をおこなう時間が単純に負担となっている可能性が高い場合には、事業所の管理者や相談員にそのことをありのままに伝え、調整してもらうことが可能かどうかを確認してみましょう。
作業内容自体や人間関係についてつらさを感じているような場合でも、実は日数や時間による心身的に蓄積された疲れがそのつらさのひきがねになっており、日数や時間を減らすことで良いほうへ向かう……という場合もあります。
環境を変えてもらう
活動現場や作業所での人間関係に問題がある、作業環境自体に負担を感じている、という場合には環境を変えて欲しいと相談することも有効な手段です。
事業所にとっても、辞めてしまうほどの問題を感じているのであれば環境を変えてあげたい、と親身になって対応してくれる可能性があります。
支援者に相談してみる
B型事業所の管理者、職員や相談員、役所の福祉課担当者などの支援者に、あらゆる面をありのままに伝え、辞める以外の選択肢があるかどうかを相談します。
仕事内容を変更してみる
同一のB型事業所の中で、複数の種類の活動内容が提供されているような場合には、自分が担当する活動の種類自体を大きく変更できないかを相談してみることもひとつの手です。
B型事業所の退所に必要な手続きは?
「あらゆる可能性を検討したものの、やはりいま通っているB型事業所を辞めることに決定した」という場合には、何か事務的な手続きが必要となるのでしょうか。
結論としては、B型事業所を辞める際に法的に必要となる手続きなどは一切ありません。
B型事業所へ通うにあたっては、雇用契約が成立するわけではなく、あくまで就労が困難な方向けの障害福祉サービスを受けている状態ということになるからです。
ただし、役所の福祉課へ相談した際や、事業所へ通い始める際に例えば契約や期間についての特殊な説明があった、書面を交わしたなどの状況があった場合には、念のため取り交わした内容を再確認しておき、必要に応じて役所や福祉局など関連機関に相談しておきましょう。
B型事業所の「辞めたい」は事業所選びの段階で避けられる可能性も
本記事では、障がい者就労継続支援事業の一種である「就労継続支援B型」について、利用者が事業所を辞めたくなる場合の主な理由、対処法などを中心に解説しました。
事業所を辞めたい理由となる事柄については心身的な負担、特殊な事情など止むを得ないケースも多くありますが、勤務条件や作業内容の適性など、事業所選びの段階で回避できる事柄もあります。
いまB型事業所に通っていて、次のB型事業所を探したいと考えている方や、これからB型事業所へ通い始めたいと考えている方、当事者ご本人やご家族もぜひ、本記事でご紹介した情報を参考になさってください。